この日は9時半スタートということで、朝8時から漁協で準備が始まりました。天竜川漁協の谷高弘記事務局長、伊藤秀則氏らが、いけすに用意された約4200匹のアユ(約54kg)をトラックに移し、約20km下流の放流予定(国道1号線下右岸)に運びます。9時半前、学校から約2kmを歩いてきた子供たちが到着しました。
放流の前に、谷髙事務局長から、「アユは1年で一生を終える1年魚なんです」「アユの体温は人間よりずっと低いので、長い間手に触れているとやけどをしてしまうんです。だから、川の水で手の温度を下げ、アユをつかんだらできるだけ早く川に流してください」などのアユの説明や放流に際しての注意事項を聞きました。さぁ、いよいよ放流の始まりです。
アユの入ったポリバケツを手に恐る恐る川に入っていく子供たち。あちこちか「冷た〜い!!」という声が上がります。この日の水温は、約15℃。子供たちは川の水に慣れてないこともあって、水際に留まっています。「そんなところに固まって放流したんじゃ魚が留まってしまう……」と先生が心配されていましたが、じきに子供の本領発揮です。水温に慣れてくるとバシャバシャと川に入っていきました。
「ヌルヌルしている〜!!」初めてアユに触れた子供たちは、想像もできなかった感触にビックリ! でも、しばらくするとバケツの中で逃げるアユとの格闘が段々楽しくなってきたのでしょう。「捕まえた!」「見て!」と自慢気にカメラに雄姿を見せていました。
この日の放流は1回につき一人約20匹、それを2回繰り返しました。終了後は子供たちからいろいろな質問が寄せられました。
「1年以上、鳥にも人間にも捕まらなかったアユはどうなるんですか?」
「アユは何でヌルヌルしているんですか?」
アユは基本的には1年魚ですが、中には1年以上生き長らえるものもいるようです。また、ヌルヌルしているのは傷や細菌から皮膚を保護するため。ヌルヌルはアユにとっての服みたいなものなのです。
——こうして、約1時間の放流会は予定通り無事終了しました。
天竜川漁協は、子供たちに川や魚に親しんでもらおうと、このような活動を積極的に行なっています。