ダムの構造

重力式―コンクリートの重いおもしで水圧に耐える構造

重力式イメージ

断面が三角形のコンクリー卜構造で、ダム自体の重さで貯水池の水の圧力などダムにかかる力を支えています。この形式は、ダムが滑り出すことや倒れることに対する安全性が高いので、地震の多い日本のダムでは約90%がこの形式を使っています(天竜川では佐久間、秋葉、船明ダムが重力式ダムです)。重力式ダムの構造を進化させたのが「中空重力ダム」で、この形式ではダムの内部を空洞にすることによって、ダムに使用するコンクリートの量を減らすことができます。反面、ダムの強度を保つため、複雑な構造が必要となります。

アーチ式―アーチ型コンクリート壁で水圧に耐える構造

アーチ式イメージ

ダム両岸の岩盤で支えられたコンクリート壁のアーチ構造で、水の圧力に対応する構造形式です。この構造だとダムの厚さが薄くできるため、コンクリートなどの建築材料を少なくすることができます。しかし、ダムにかかる重さや力は、アーチ構造を支える両岸の岩盤に加わるため、岩盤が丈夫な場所でないと建設に適しません。また、同様の理由で、谷がせまく、ダムの高さに対して(重力式ダムのように)幅が長くならない地形に適しています。天竜川では新豊根ダムがこの方式です。

ロックフィル式―岩や石などを積み上げる構造

ロックフィル式イメージ

ダムを作る場所の周辺にある岩石(ロック)などを積み上げることで、コンクリートを使わないで作る構造の重力式ダムです。ダムの中心や上流面には水漏れを防ぐために粘土質の材用を使い、その上に小石を混ぜ、さらに外側に大きな岩を積み上げていきます。ダム自体の大きさが非常に大きくなりますが、材料の岩石が近くにある場所には適しています。天竜川水系では水窪ダムがこの方式です。

その他

●アーチ重力式コンクリートダム/アーチ状の堤体に重力式ダムのゲートと吐水口を組み合わせたもの。アーチ式と重力式の両方の機能を持っている。
●バットレスダム/ロックフィルダムに近い三角形の断面を持ち、上流側にコンクリートの遮水壁を設け、これを支えるバットレスというコンクリートの中空・骨格構造で構成される。コンクリートの使用量が少なくてすむ利点があるが、構造が複雑で結果的に建設費が割高になるため、現在は作られていない。

●アースダム/ロックフィルダムと同様の構造だが、堤体を構成する材料に粘土や土砂を主に用いるのが特長。その分、堤高の低いものが多い。ダムの形式としては最も歴史の古いもので、日本でも農業用水を目的とした溜め池などで使われて来た。堤体の内部構造の違いにより、ゾーン型と均一型がある。
●複合ダム/ダム建設地の地盤の強度に適合するよう、2種類以上の形式を組み合わせたダム。多くは重力式コンクリートダムとロックフィルダムとの組み合わせである。