第30回天竜川天然資源再生連絡会

第30回天竜川天然資源再生連絡会の様子

日 時

平成28年12月1日(木)13:30〜16:30

場 所

天竜川漁業協同組合2階会議室

出席者

たかはし河川生物調査事務所:高橋勇夫農学博士
中部大学   :村上哲生教授
京都大学   :竹門康弘准教授
天竜川漁協  :平野國行組合長、中谷総務委員長、鈴木業務委員長、
        谷高事務局長、
静岡淡水魚研究会(静岡市環境学習指導員・静岡県環境学習指導員)
       :足立氏
 
電源開発(株)
 茅ヶ崎研究所:喜多村シニアエキスパート
 中部支店  :中嶋副支店長
  用地G  :畠グループリーダー、上野
 佐久間電力所 浜北区駐在
       :佐藤所長代理、金山M
(株) JPビジネスサービス社会環境部環境防災システムG
       :小林グループリーダー

テーマ

  1. 活動報告
    1. 高橋農学博士
    2. 村上教授
    3. 竹門准教授
    4. J Power
  2. 講演会について

内 容

高橋農学博士

  • 2016年のアユの遡上状況およびハミ跡調査について報告があった。
  • 鮎の遡上状況については、国道1号線付近のワンドにおいて、地引網による採集調査を実施した。今年の採取量は好調であり、2008年以降最高値となった。
  • 他方、ハミ跡被度は不調であり、2013年以降で最も少ない結果となった。
  • 漁協の印象としては、解禁当初の友釣りの釣果は良くなかったが、大きめの個体が掛かることもあり、かつ、シーズン後半のゴロ引きは良好であったとのこと。
  • 次に、漁協より平成28年度天竜川流下仔魚調査の速報が提供された。今年は夏季の濁りが少なかったせいか、流下仔魚量は好調であるとのこと。

村上哲生教授

  • 天竜川の付着藻類の特徴として、チャヅツケイソウ等の糸状緑藻の割合が多い。糸状緑藻が増殖しやすい低水温期だけでなく、6月末にも優占傾向にあった。
  • 茅ヶ崎研究所での屋内洗浄・剥離実験について、今回用いた試験装置の流速では、ほとんど剥離効果が見られないため、更に水圧を上げるか、水に微細な砂を添加して剥離効果を上げるかの2案が提示された。

竹門康弘准教授

  • 2016年11月7日、8日に実施した採水調査の結果速報について報告があった。本調査は、砂州の上下流で採水調査を行い、主として、砂州地形の違いによる濾過能力の違いを分析するものである。計25地点で採水を実施した。
  • SS濃度はダム直下で最も高く、流下に伴い減少する傾向が確認された。特に8.2kmの湧水地点では顕著に低下する傾向が確認された。
  • 採取した懸濁成分と付着藻類については、分析作業に向けて準備を進めている。また、砂州地形形状のデータ化も併せて行っており、懸濁成分の変動傾向と砂州地形の関係を統計的に解析する方針である。
  • 今回の調査では佐久間ダムの水位変動の影響により、調査途中での流況の変化があったため、同様の調査を2月中旬に実施することになった。
  • 次に、アユ産卵適地造成のための湧水砂州調査について、報告があった。近年実施した横断測量およびレーザープロファイラ(航空測量)の結果を基に、最新の浸食・堆積履歴を集計し、堆積が卓越している箇所を抽出し、その中でも実際に湧水瀬が確認された8.2~8.4km地点を再生候補箇所とした。また、以前産卵床再生を実施した15.0~15.4km地点についても、経過観察を行うこととし、サーモビデオとドローンを用いて、湧水の状態を調べる計画である。

喜多村雄一

  • 平成28年度の佐久間貯水池の濁水状況について報告がなされた。アユ釣り解禁前の5月に一度出水があったものの、解禁日以降9月中旬までは出水がなく、濁度が低い状態が続いた。9月下旬以降は少雨が続いており、若干濁度が高い状態が続いている。
  • マイクロバブルについては、直径1mの水槽で実証しているが、泡のせいでアユがエサを発見できない問題が生じているため、昼間は装置を止めて間欠運転を行って継続検証している。
  • 天竜川と球磨川(対照用)、飼育水、マイクロバブルのそれぞれで採取したアユについて、特性調査と食性調査を実施している。今後ゲノム抽出とシーケンスを実施し、DNAの解析を行う予定である。
  • 河川環境の改善選定支援(プランニングキット)について、河口から秋葉ダムまで1km毎に区切って、環境因子を整理・評価した表(通称:AYU48)を作成・共有する。定点データや再生連絡会で得られた知見を基に、プログラムを作成しており、次回連絡会までにデモ版を完成させる予定である。

講演会について

  • 講演会については、次回連絡会で、喜多村氏よりシンポジウム形式とワークショップ形式の2案を提示することになった。