私はアユの餌となる付着藻類の調査をしています。近年のアユの減少傾向は遡上数よりも付着藻類の生育不良=餌の減少が主たる要因であり、その原因は水のにごりにあると考えていました。また、ダム下流では藻類が過剰に発生し、その代謝が滞る事で起こる赤グサレも発生しています。これらの元凶はダムに関係なく季節や場所によってその発生が変動することがわかりました。
たとえば水中の栄養分の問題があります。富栄養分が藻類を異常発生させる場合がありまが、ダム自体は栄養分をせき止めるものですから下流は栄養失調状態になってもおかしくはありません。しかし、現実に赤グサレは起きている。これらの事実から、おぼろげながら具体的な方策も見えてきたので、今年はそれを実施して行こうと思っています。
調査という行為だけで具体的な提案がなされなければ何も変わりません。今後はより効率的な方法論を提案・議論していくつもりです。天竜川では14年前から学者(私)と漁協が一緒になって調査を進めており、全国でも類のない活動を見せていますが、川全体の広域的な水の管理には役所の理解と協力が不可欠です。そのためにも、川を知るすべての人の、とくに地元の方々の雰囲気や意見作りが大切だと考えています。
中部大学応用生物学部環境生物科学科教授
村上哲生