第31回天竜川天然資源再生連絡会

第31回天竜川天然資源再生連絡会の様子

日 時

平成29年2月23日(木)13:30~16:30

場 所

天竜川漁業協同組合2階会議室

出席者

たかはし河川生物調査事務所:高橋勇夫農学博士
中部大学   :村上哲生教授
京都大学   :竹門康弘准教授
天竜川漁協  :平野國行組合長、中谷総務委員長、鈴木業務委員長、
        谷髙事務局長
国土交通省浜松河川国道事務所調査第一課:林課長
静岡県経済産業部水産資源局水産資源課資源増殖班:吉川班長
電源開発(株)
 茅ヶ崎研究所:喜多村雄一シニアエキスパート
 中部支店  :中嶋副支店長
 佐久間電力所(天竜):金山M
  用地G  :畠グループリーダー、服部GM、上野
 
(株) JPビジネスサービス社会環境部環境防災システムG
       :小林グループリーダー、白砂M

テーマ

  1. 活動報告
    1. 高橋農学博士
    2. 村上教授
    3. 竹門准教授
    4. J Power
  2. 国土交通省浜松河川国道事務所より
  3. 静岡県水産資源課より
  4. 講演会について

内 容

高橋農学博士

  • 2016年度夏季におけるアユの餌料環境とアユの分布について報告がなされた。
  • 秋葉橋、浜北鉄塔付近で採集したアユについて、肥満度と胃内容物の分析を行った。
  • 今年度の天竜川は例年に比べ濁りが少なかったが、それでもアユの胃内容物に占める無機物(砂泥)の割合が高く、餌料として許容できるレベル(55%)を超えていた。肥満度についても、例年に比べて良好だったが、四国で採集されたアユに比べるとやや痩せている状態であった。
  • アユのハミ跡被度調査については、昨年同様、低調な結果であった。過去の調査結果から、濁度が高いとアユの減耗率が高くなる傾向が分かっている。

村上哲生教授

  • 天竜川で採取した砂礫は、クロロフィル量自体は他河川と比べて遜色無いものの、シルト・粘土含量が多く、クロロフィルa/フェオ色素比が小さいため、アユのエサとなる付着藻類の割合が小さいことが分かっている。初夏や秋に糸状緑藻が繁茂していることも、その一因だと考えられる。糸状緑藻は通常、低水温期に増殖するが、天竜川の場合6月末にも発生する傾向がある。
  • 1月に実施した河床洗浄試験におけるシルト・付着藻類の剥離効果について報告がなされた。作業前・作業後の礫について比較分析を行ったが、付着物の除去効果は確認されたものの、古い被膜やシルト分を選択除去する効果は認められなかった。
  • 今後の研究方針としては、フラッシュ放流検討の基礎資料とするため、付着被膜の更新に十分な流速・流量を検証していくことだが、これに対し、竹門准教授からは、ダム放流による河川影響としては、砂礫の入れ替わりによる効果の方が大きいため、流量だけではなく効果的な置き土方法についても検証すべきだと提起がなされた。

竹門康弘准教授

  • 砂州の濾過機能を計測・分析するにあたり、安定同位体分析によって有機物の栄養起源を調べる手法が紹介された。一般的に食物連鎖によって安定同位体比は高まる傾向にあるため、その割合を調べることで、ダム湖由来の有機物(プランクトン)なのか、河床由来の有機物(付着藻類)なのかを測定することが可能である。
  • 11月採水調査における懸濁成分の安定同位体比を分析したところ、炭素・窒素ともに河口に行くにつれて比率が上昇し、付着藻類の寄与が高まることが分かった。
  • 2月18日・19日に再び採水調査を実施した。これは河床安定期における濾過効果を測定し、11月と比較するためである。洪水直後には新たな砂州が形成されるため、最も濾過効果が高いが、その後目詰まりを起こして劣化が進む。濁水長期化が常態化している河川では、その傾向が顕著であると推察されるため、検証を行う。
  • 次の研究目標としては、置き土によって砂州の濾過効果を維持することであり、まずは研究室で水路実験を行い、適正な土砂量を検証したい。

喜多村雄一

  • マイクロバブル水槽に入れた仔魚・成魚はほぼ死滅してしまった。遺伝子解析の結果では、ストレスによって誘導される遺伝子の発現量が増加しており、バブルによる物理的なストレス影響が示唆された。他方、バクテリア感染や炎症反応で誘導される遺伝子の発現量は低減しており、バブル装置の間欠運転によってストレスを抑えながら水質改善につなげる方法を今後検証したい。
  • アユ生息環境改善策選定支援ツール(AYU48)のデモンストレーションが行われた。水温・濁度等について実測データを取り込み、流量・時期に応じた生息環境の好不適を評価する構成になっている。今後、実用化に向けて、細部の調整を行っていきたい。

国土交通省浜松河川国道事務所より

  • 3月24日に名古屋で開催される「天竜川流砂系総合土砂管理計画検討委員会」の紹介があった。

静岡県水産資源課より

  • 第5種共同漁業権の許可条件となっている増殖義務については、産卵床造成や発眼卵放流等、成魚放流以外の方法を認めるべきかどうか議論があるが、認定するためには科学的な裏付けが必要であり、当連絡会においてその調査・検証を行ってほしいとの意見があった。

講演会について

  • シンポジウムについては、竹門准教授の産卵床造成作業前に開催する必要があり、9月前半の開催が望ましい。9月3日(日)を第一候補として会場を押えることとした。